ニューノーマルな働き方とは?社員を不安にさせない出社・テレワーク運用&改革事例まで

テレワーク

コロナ禍でテレワークが急速に普及し、多くの企業で出社とテレワークが臨機応変に運用されています。この”新しい働き方”はコロナ禍限定のものではなく「ニューノーマル」として、多くの企業で継続される見込みです。ただ、アンケート調査などを見てみると、特にコロナ禍での出社について不安を抱える社員が多い様子。そんななか、企業はどのようにその不安を払拭し、エンゲージメントの低下を阻止すれば良いのでしょうか。

今回の記事では、主に出社勤務の場合の懸念点や企業が取り組むべき対策、そして「ニューノーマル」な働き方を導入した企業の事例まで詳しくご紹介します。

ニューノーマルな働き方とは!

2020年から始まった新型コロナウイルスの影響は、世の中の働き方をも大きく変えることになりました。

まずは、2021年3月に 発表された日本総研の調査を見てみましょう。新型コロナウイルス感染症の流行前後での在宅勤務の導入・拡大状況を見てみると、大規模企業ではコロナ禍に伴って在宅勤務を導入した企業が45%にのぼりました。そのうち、約69%では、終息後も継続すると回答しています。

中小規模の企業はというと、コロナ禍に伴って在宅勤務を導入した企業が42%ある一方で、導入していない企業も49%と約半数を占めました。また、終息後も継続すると回答した企業は約55%でした。

テレワークを導入するには、社内SNSなどのコミュニケーションツールの導入、通信インフラの整備、ノートPCなどの貸与など、環境の整備も必要。それらの環境が整ったことも後押しとなり、コロナ禍が終息した後も「ニューノーマルな働き方」として、多くの企業で出社とテレワークのハイブリッド運用が継続されると見込まれています。

【出典】新型コロナウイルス感染症に関するアンケート調査結果/株式会社日本総合研究所(経済産業省)

テレワークの導入を成功させるコツ

出社とテレワークのハイブリッド運用が進むニューノーマル時代。まずは、テレワークを組織に導入するコツについて見ていきましょう。One-BoのTIPS記事で既にさまざまな角度からご紹介していますので、ぜひご参照ください。

▶︎テレワークのメリット・デメリットから見る、企業への導入を成功させるコツ
https://www.one-bo.com/telework/

▶︎【2021】今テレワーク導入に使える助成金はある?令和3年度の最新情報
https://www.one-bo.com/subsidy/

▶︎テレワークのストレス、どう解消する?快適なリモート勤務のためにできること
https://www.one-bo.com/telework-stress/

▶︎仮想オフィスとは?テレワーク中の雑談機会を増やす、おすすめツール紹介
https://www.one-bo.com/office_tool/

ニューノーマルな出社勤務の懸念点と対策

続いて、出社勤務の場合の懸念点と対策について見ていきましょう。まず、未だ出口の見えないコロナ禍で、一部の業界や企業では、人材の流出が始まっています。そんな状況で、企業はコロナ禍における社員の不安を払拭するための対策を講じ、エンゲージメントの低下を阻止しなければなりません。

まずは、コロナ禍の出社で社員が感じている不安、そして具体的な対策としてできることについてご紹介します。

コロナ禍での出社が嫌だと感じる人が約6割

2021年にユニテックシステム株式会社が発表した「コロナ禍の出社に関するアンケート調査」(対象:コロナ禍で週3日以上出社している就業者400名)によると、「コロナ禍で出社することに関しての思い」について、

– かなり嫌である…23.8%
– やや嫌である…33.8%
– あまり嫌ではない…27.3%
– 全く嫌ではない…15.3%

という結果となりました。「嫌」と回答した人が、全体の57.6%、約6割を占めています。その理由を見てみると、

– 通勤時の不特定多数との接触リスク…38.3%
– 体調が悪い人が出社しているかもしれない…31.5%
– 職場内が密になっている…27.5%
– 換気がしづらい環境である…21.3%
– マスクを外している人がいる…18.8%

となっています。社内においては、守られるべきであるルールが守られず、感染対策もままならない環境が従業員を不安にしてしまっている様子が見て取れます。その不安を払拭するために、企業はどのような対策をすべきなのでしょうか。

基本的な感染対策と、社内外への周知という2つの軸でご紹介します。

【出典】コロナ禍の出社に関する」アンケート調/ユニテックシステム株式会社

【基本的な感染対策】

まずは、働く環境の整備です。もはや当たり前とも言える対策として、以下の3つが挙げられます。

◎アルコール消毒液の常設
◎座席の間隔を空ける、座席の間にパーテーションを設置
◎オフィスの定期的な換気

その他にも、例えば給湯室や会議室など、多くの社員が訪れる場所の定期的な消毒、また食堂や休憩室の座席数を減らす、パーテーションを設置する、座席の配置を変えるなどの対策も有効でしょう。

私の友人の働くコールセンターでは、コロナ禍以降、30分ごとに全員で自身の周辺をアルコールで除菌するというルーティンが加わりました。出社する人数の多いオフィスでは、それだけ感染リスクも高くなります。全員での除菌は、感染対策であると同時に、皆の危機意識を醸成するという意味合いもあったのではないかと思われます。

次に、社員の感染対策です。毎朝オフィスの入り口で検温する、朝礼で健康状態を把握するなどの対策は当然実施されるとして、会社側から飛沫防止効果が高いとされる「不織布マスク」を配布する、フレックスタイム制を積極利用して、公共の交通機関のピークタイムでの出勤を減らすなどが挙げられます。

また、テレワークと出社の社員数のバランスを取り、社員同士の接触の機会を減らす。さらには、持病を持っているなど、新型コロナウイルスに感染した際のリスクの高い社員は原則リモートワークとするなど、一歩踏み込んだ対策を講じている企業もあります。

【コロナ対策の社内外への周知】

具体的な対策を講じるだけでなく、自社のコロナ対策やルールについて社内外に発信することも有効な手段の一つです。社員の不安を払拭するだけでなく、取引先や顧客、社会に対するメッセージとしての役割も果たします。以下に、その事例をご紹介します。

株式会社 資生堂

化粧品大手資生堂では、2021年5月に「当社の働き方について」という文書を公表しています。緊急事態宣言発令地域では、原則出社しないこと。出張は自粛していること、セミナーへの参加はリモートを推奨し、社内外の会食は実施しないことなどが盛り込まれています。ルールを公表することにより、社内においてよりルールが徹底されるだけでなく、取引先に対しても明言することで、出張や会食などの自粛の効果が高まります。また、有事の際に社員を守る姿勢を明確に示すことで、企業のイメージアップにも繋がります。

 【参考】当社の働き方について/資生堂

東京電力ホールディングス株式会社

東京電力ホールディングスでは、2020年4月、社長名で社内向けの「対策強化のお願い」を発信しています。これまで実施していた検温やマスク着用に加え、長期休暇中の県外との往来の禁止や、不要不急の外出自粛、さらには行動履歴を記録に残すという、徹底した取り組みについて、協力企業や社員の家族にも協力を呼びかけています。社員と同様に、我慢を強いることになってしまう家族への社長直々のメッセージとも読み取れます。

また、この文章は同社ホームページのニュースリリースで社外向けにも公開されています。同社で多数の感染者が確認されたことを受けて発表されたものですが、感染防止対策を明確に示すことで、感染者を出してしまった企業としての責任を果たそうとしている姿勢が見えます。

 【参考】(社内メッセージ)当社グループにおける新型コロナウイルス感染者の発生を踏まえた対策の強化のお願い/東京電力ホールディングス

ニューノーマルな働き方を導入した企業事例

最後に、ニューノーマル時代に向けて、新しい働き方に大きく舵を切った企業事例をご紹介します。

パソナグループ/淡路島への本社移転

人材大手パソナグループは、2020年、東京・大手町にある本社を兵庫県・淡路島に移転すると発表しました。新型コロナウイルス感染拡大を受け、自社や取引先各社でもテレワークの導入が進み、これまでのように東京に住んでいなければ仕事ができない、人や情報が集まらない、という状況が変化してきたことが背景にあります。

また、近年注目されている「BCP(事業継続計画)」の観点から、今後起きると予想される大規模震災などに備え、東京一極集中を避け、拠点を複数持っておくという考え方も含まれています。人事・財務経理・経営企画・新規事業開発・グローバル・IT/DX等の本社機能を、淡路島へ分散し、2023年度には1,200名の社員を淡路島へ移行する計画です。

【参考】パソナグループ 本社機能を分散、淡路島に移転開始/株式会社パソナグループ

みずほ銀行/サテライトオフィス設置

金融機関は、昔ながらの押印文化やペーパーレス化が進まないなどの物理的な側面や、顧客情報の流出などのセキュリティ面などから、テレワークが進みにくい業種とも言われてきました。そんななか、みずほ銀行がDXの推進で業務効率化を実現することで発生した銀行支店内のスペースを、サテライトオフィス化することが報じられました。それにより、社員が自宅近くの店舗で働けるようになります。これには、コロナ禍において満員電車で通勤するリスクを軽減するという狙いもあるようです。

これに追随して、同業のりそな銀行、三井住友銀行も、支店のレイアウトを見直し、サテライトオフィスを設ける方針を打ち出しています。

【参考】従業員の25%を遠隔勤務に みずほ、支店をサテライト拠点化/日本経済新聞

ClipLine株式会社/オフィスを解約し全面テレワークに

人材教育などのDXに活用する動画学習システムを提供するClipLine株式会社は、社員50名、インターンを含めると80名ほどの組織。同社は東京にオフィスを構えていましたが、コロナ禍で全面的にリモートワークを推進。その上で社員全員に1on1を実施し、リモートワークの状況をヒアリングしたところ「自宅の方が生産性が向上する」という声が多く寄せられました。

結果、2020年7月にはオフィスを退去。全面的にリモートワークに移行することとなりました。

この改革によって生産性が向上しただけでなく、通勤交通費の削減、通勤や身支度にかかる時間の削減、また採用についても応募者が以前の数倍になるなど、大きな効果が出ています。

【参考】オフィスを解約し全面テレワークに移行した経営者の決断背景/BizHint

ニューノーマルな働き方を実現し、社員とのエンゲージメントを向上

ニューノーマルな働き方のスタンダードになるであろう「ハイブリッド型」。企業には、出社、リモート双方を実施できる体制が求められます。導入や浸透させるまでにエネルギーはかかりますが、定着してしまえば生産性の向上や、社員のストレスの緩和、働きやすい環境の整備にも繋がります。そうすれば、社員とのエンゲージメントの向上につながるだけでなく、これまで出産や育児、介護などで退職してしまっていた、優秀な人材が働き続けられる環境も提供できるでしょう。

今後この働き方がスタンダートになることで、多くの人が自身の時間も重視しながら、柔軟に働ける環境が整うのではないでしょうか。

この記事を書いたひと

三神早耶(みかみさや)

大学卒業後、広告代理店に入社。企画営業と制作進行管理を兼務。その後、出版社でコンサルティング営業、国立大学でeラーニングツールの運営や広報サポートなどを担当し、2016年よりフリーライターに。経営者向けウェブメディア等で、経営者インタビュー、組織改革、DXなどについて取材・執筆。