テレワークのメリット・デメリットから見る、企業への導入を成功させるコツ

働き方

テレワークの導入を検討している担当者の中には、テレワークを導入する前に利点やマイナス面を知っておきたいと考える人もいるでしょう。本記事ではそのような人に向けて、テレワーク導入による企業側・従業員側それぞれのメリット・デメリットと、テレワーク導入を成功させるコツを紹介します。

働く人のアンケートから見る、企業におけるテレワークのメリット・デメリット

テレワークを導入することで得られるメリットがある一方、環境が変わることによるデメリットも存在します。ここでは主に「生産性」の観点に重きを置いて解説します。

ワークライフバランスが向上!テレワークを導入することで得られる様々なメリット

そもそも「テレワーク(telework)」とは、tele(離れて)とwork(仕事)を組み合わせて造られた言葉で、情報通信技術を活用した、時間や働く場所を有効に活用する柔軟な働き方を指しています。企業オフィス以外の自宅やサテライトオフィスといった場所を利用するなど、働く時間や場所に縛られない働き方といえるでしょう。

ザイマックス総研が行ったアンケート調査によると、テレワーク経験者の多くが「集中して仕事ができる」、「仕事の成果が向上する」など、仕事の質の向上につながる効果を感じていることが分かります。このことから、テレワークの導入によって生産性の向上が期待できるといえるでしょう。

ほかにも、「家族との時間が増える」、「残業時間が減って自分の趣味や余暇などの時間が増える」といったメリットを感じている人が多くいます。さらに、「ストレスが減る」と感じている人が4割を超えるなど、テレワークによってワークライフバランスの向上による集中力や生産性、創造性のアップ、および従業員の心身の健康に良い影響を与えていることが見てとれます。

ただし生産性には課題も?テレワーク導入企業で感じやすいデメリット

テレワークの導入によって様々なメリットが考えられる一方で、ネガティブな意見を挙げる人も少なくありません。Googleが2020年4月に実施した調査では、2020年1月以降にテレワークを始めたオフィスワーカーのうち、およそ4割が「テレワークにより生産性が下がった・やや下がった」と回答していることが分かっています。

生産性が下がったと感じた人は、「生産性が上がった・やや上がった」と回答した人よりも実施期間が短い傾向がありました。また、生産性が上がったと感じた人ほど「会社のシステムやツールの拡充」に対する要望が少ないという特徴が見られます。このことから、テレワーク経験期間や会社の環境整備がテレワーク導入後の生産性に影響を与えるといえるでしょう。

成功のポイントは「リモートでも生産性を高める仕組みの構築」にある

上記のメリット・デメリットから、テレワークを導入する際に重要となるのは「生産性を保つ」「生産性を向上させる」点にあることが導き出せます。テレワークの導入によって生産性が下がってしまう企業は、社員がリモートワークを円滑に進めるためのシステムや環境が整っていないといえるのです。

なお、先述のGoogleによる調査では、企業の規模にかかわらずテレワークは従業員にとって満足度の高い働き方であることも明らかになっています。ペーパーレス化の促進やツールの拡充など、事業規模によって課題は異なりますが、「うちは中小・零細企業だからテレワークの導入は難しい」と諦めることなく、どの企業でも課題を解決しつつ環境を構築することが重要です。

生産性を上げるには?テレワークの導入を成功させる「3つのコツ」

テレワーク導入と生産性向上を両立するには、どのような対策をすれば良いでしょうか。ここからは、テレワークの導入を成功させるコツや、テレワークとオフィス勤務を組み合わせた「ハイブリッド体制」を紹介します。

制度やツールで、従業員が「リモート勤務しやすい環境」を整える

生産性を向上させるためには、制度やツールを拡充することで、従業員がリモート勤務しやすい環境を整える必要があります。具体的には、「チャットツールやWeb会議ツールの活用」「ファイル共有クラウドサービスの導入」「ペーパーレス化の推進」「パソコンやネット環境の提供」「デスクや椅子などの作業環境整備に対する補助」などが挙げられます。補助については、国の助成金を活用できる場合もあるので、条件などを確認した上で申請しましょう。

また、リモートワークではPCなどの機材や各種資料などを社外に持ち出すため、より強固な情報セキュリティ対策が必要です。セキュリティツールの導入や社員への研修などの実施が必要となるでしょう。他にも、従来の業務フローをテレワークに対応したものに改善するといった対策が考えられます。

仕事の成果から適正に人事評価するための基準や制度を設ける

テレワークの場合、オフィスでの業務と異なり、従業員の働いている姿を見ることができません。社員への適切な評価を行うには、勤務時間や労働プロセス、仕事への取り組み姿勢といったものではなく、定量的な成果で評価する方法を取ることが必要です。この評価方法を取り入れることで、企業側が抱える「目が届かないため社員の管理がしにくい」といった不安と、従業員側の「きちんと仕事ぶりを評価してもらえるのか」という不安が双方とも解決できるでしょう。

また、雇用方法そのものを、従来の「メンバーシップ型」から「ジョブ型」へ切り替えるのも良いでしょう。前者は従業員を採用した後に教育を施し、それぞれの適性や企業の業況などを考慮した上で適切と思われる部署や職種に配置する方法です。一方、後者は配属先の仕事内容や範囲をあらかじめ決めた上で、そこに配属するのに見合った適正やスキルを持っている人材を採用する方法です。

メンバーシップ型からジョブ型へと雇用方法に変えることで、個人の専門性を高められることが期待できます。人事評価を行う上でも、あらかじめ設定した目標の達成度や成果をもとにした評価ができるなど、評価基準が明確になることで各従業員の評価がしやすくなるというメリットがあります。

近年ではとりわけ営業職においてジョブ型を導入する企業が増えています。これまで得意先ごとに担当分けしていたのを営業プロセスごとに分業化することで、その分野に特化したプロフェッショナルな社員を育成できることが期待されます。それによって企業側も生産性の向上のメリットが得られると考えられているのです。

テレワークと出社勤務を併用する、柔軟な「ハイブリット体制」を構築するのもおすすめ

テレワークと出社勤務を併用した「ハイブリッド体制」を取り入れるのも良いでしょう。一人で黙々とこなす事務作業はリモートワーク、複数人で意見を交わすプロジェクト進行はオフィスで行うなど、業務内容やスケジュールなどに応じて、従業員自身が最も生産性が高いと思う働き方を柔軟に選択できる点が特徴です。

テレワークによる生産性の低下を防げるだけでなく、従業員が好きな場所を選ぶことで快適な労働環境が得られるメリットがあります。企業にとっても、柔軟な働き方の導入をアピールすることで、より優秀な人材が確保できる利点があります。一方、従業員の管理が難しくなる点やコミュニケーションが取りにくくなる点など課題もあるでしょう。

ハイブリット体制の導入には、「ハイブリッド体制のためのガイドライン」が参考になるかもしれません。これは2020年4月よりハイブリット体制への移行を進めているプラザクリエイトが、試行錯誤の中で得られた知見を一覧にまとめたものです。導入に際してのノウハウをはじめ、発生しうる課題やその解決策などが記載されています。

テレワーク導入を成功させるためには、システムや環境整備が重要です。本記事で紹介したコツを参考に、生産性を向上させるポイントを押さえつつ、効果のあるテレワークの導入を進めていきましょう。

テレワーク導入の体制を構成していきましょう

テレワークを導入することで生産性の向上や従業員の心身の健康に良い影響を与えるなど、多くのメリットがあります。しかし、リモートワークのためのシステムや環境を整えていないと、生産性が低下してしまうかもしれません。

これからテレワークを導入する企業は、本記事で紹介したコツやハイブリッド体制のガイドラインを参考にしつつ、万全な体制を構築していきましょう。