いま話題!【パープル企業】とは?人材視点のデメリットや、パープル企業にならないための施策まで解説

働き方

ホワイト企業でもブラック企業でもない「パープル企業」という言葉が、ここ数年じわじわと話題になっています。別名「ゆるブラック」とも呼ばれるこの企業には、一体どのような特徴があるのでしょうか?この記事では、パープル企業が生まれた背景から、人材視点でのメリット・デメリット、人材がパープル企業で働くことを望んでいるのか、そして企業が「パープル企業」であることのリスク、そうならないための施策まで詳しく解説します。

パープル企業とは

ここ数年で新たに生まれた言葉に「パープル企業」があります。今回は、この言葉について深堀りしていきます。

パープル企業とは何か

そもそも「パープル企業」とは、「ブラック企業」と「ホワイト企業」の間を指す言葉です。別名「ゆるブラック」とも呼ばれています。

パープル企業は、一般的に長時間労働は無く、ノルマなどの厳しい縛りもありません。社内の雰囲気も良く、離職率は低いと言われています。一見「ホワイト企業」にも思えますが、日々の業務はルーティンワークが多かったり、適切に指導されなかったり、満足に働かせてもらえなかったりするケースも少なくない様です。それゆえに、スキルを身につけることが難しいこと、成長や昇給が見込めないなどの難点があります。

パープル企業はなぜ生まれたのか

それでは「パープル企業」はなぜ生まれたのでしょうか?諸説ありますが、近年叫ばれている「働き方改革」の影響が大きいと言われています。社員を定時退社させるため、新たなチャレンジやアイデアを採用せず、慣れた仕事ばかりやらせる、若手社員の離職やハラスメントを防ぐためにマネジメント層が積極的に指導をしない、などの声も聞かれます。

人材から見た「パープル企業」

一見、人材にとっては働きやすさを感じるパープル企業ですが、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

人材から見たメリット・デメリット

人材視点でのメリット、デメリットは以下の点が挙げられます。

【メリット】

◎残業や休日出勤が無く働きやすい

◎ストレスの少ない仕事内容

◎職場の雰囲気が良い

  

【デメリット】

◎給料が上がらない

◎業務にやりがいを感じられない

◎スキルが身に付かず転職で苦労

人材にとって最も大きなリスクは、パープル企業で働き続ける事によって成長できず、転職を考えたとしても採用に繋がらないという点です。また、パープル企業での働き方に慣れているため、成長企業に転職が叶ったとしても大きなギャップを抱えてしまうという現状があります。

パープル企業で働きたいか

実際に、人材は「パープル企業」で働きたいと思っているのでしょうか。株式会社AlbaLinkの調査「ゆるブラック企業に関する意識調査」(2023年)を見てみましょう。

働く人512名に「ゆるブラック企業で働きたいと思いますか?」と聞いたところ、「あまり思わない」が46.1%、「全く思わない」が21.9%と、全体の約7割が「思わない」と回答しています。その理由としては、

◎成長できない…134名

◎収入が増えない…123名

◎やりがいが無い…38名

が、上位となっています。やはり、年数だけが経過してスキルが身に付かず、自身の成長が感じられない事に対しての不安がある様です。また「仕事が少々キツくても、給料を上げたい」「年収が上がらないとプライベートも充実しない」など、収入に対する不安の声も挙がっています。

【参考】ゆるブラック企業に関する意識調査/株式会社AlbaLink(PR Times)

パープル企業であり続けることのリスク

次に、企業視点で見ていきましょう。企業が「パープル企業」になってしまった場合、そこには大きなリスクがあります。

◎パープル企業に甘んじる人材が退職しない

◎社員が成長しなければ、企業も成長できない

◎VUCA時代にも関わらず変化に対応できないため、やがて失速

パープル企業は離職率が低いと言われています。居心地が良いため、そこに甘んじている社員は退職しないのです。「やりがい」「成長」を求めない社員が定着してしまえば、やがて企業は停滞してしまうでしょう。社員一人ひとりのスキルが向上し、失敗を恐れずにチャレンジし続ける事によって、企業内にイノベーションが生まれ、これだけ変化の激しい時代と言われる中でも成長し続ける事ができます。「社員の成長無しに、企業は成長しない」と言われます。それができない企業は、やがて失速してしまいます。

パープル企業にならないための施策

そもそも、企業が「パープル企業」にならないために、何ができるのでしょうか。

ビジョンを浸透させる

まずは、経営ビジョンを社内に浸透させる事です。「何のために仕事をしているか」を明確にする事で、社員のモチベーションが高まるだけでなく、業務に主体的に取り組めるようになります。

マネジメント層の教育

「働き方改革の遵守」や「Z世代への対応」「ハラスメント防止」など、現代のマネジメント層は多くの難題を抱えながら部下と接しています。そのため、先ほどご紹介したように「積極的に指導をしない」というケースも少なくありません。そこには「不安」があるため、まずはそれを払拭すべく、ハラスメント研修などでどういったケースがハラスメントにあたるのか知ること。そして、一律残業を禁止するのではなく、どういったケースで認められるのか会社として明確化すること。さらには、社内の人材育成の方針をしっかり定めた上で、一人ひとりに合った指導を進めていくことがベストだと言えます。

社員の成長にコミットする

社員に成長を実感させる事も重要です。そのためには、期初に経営ビジョンに紐づいた「目標」をしっかり設定し、上司と部下で定期的にそのプロセスを振り返ります。その上で、個人の「成長」をしっかり見える化し、社員に実感させる事が大切です。

評価制度を見直し「頑張り」を正しく評価

人事評価制度の見直しも大切です。年功序列的な制度ではなく、一人ひとりの貢献が正しく評価され、それが昇給などに分りやすく反映される事が重要です。また、評価体系は「職種ごと」にしっかりと練り直し、不公平感を生まないという点にも気をつけなければなりません。

個人の価値観を知り「やりがい」を追求

社員一人ひとり、価値観は違います。業務上で「やりがい」を感じるタイミングも、「お客様にありがとうと言われた時」「業務で売上を上げた時」「昇給した時」など、さまざまです。まずは1on1などの機会を設け、相手の価値観を知り、その上で社員が「やりがい」を感じるポイントを把握しておく事も大切です。

【おわりに】

いかがでしたか?「パープル企業」についてSNSで検索してみると「新卒で入った会社がパープル企業で、転職できない」「変化が激しい時代に、こんな企業で働いている人は要注意」「うちの会社は、20代も70代もまったく同じ仕事をしていてパープル企業」など、リアルな声が見えてきました。「ブラック企業」という言葉が一世を風靡しましたが、ぬるま湯に浸かってなかなか抜け出す事ができない「パープル企業」の方が、人材にとっても企業にとってもリスクが大きいのかも知れない、と感じました。

この記事を書いたひと

三神早耶(みかみさや)

大学卒業後、広告代理店に入社。企画営業と制作進行管理を兼務。その後、出版社でコンサルティング営業、国立大学でeラーニングツールの運営や広報サポートなどを担当し、2016年よりフリーライターに。経営者向けウェブメディア等で、経営者インタビュー、組織改革、DXなどについて取材・執筆。