コロナ5類へ移行でどう変わった?テレワーク実施状況・企業と社員の本音・テレワーク制度導入メリットまで

テレワーク,働き方

新型コロナウイルス感染症は、2023年5月に「5類」へ移行されました。それに伴って行動制限や外出自粛要請が無くなり、企業の働き方も様変わりしています。中でも、コロナ禍で急速に普及したテレワークの実施状況は、下降の一途を辿っています。「出社回帰」を宣言する企業も現れる中、ある調査ではテレワークの継続を希望する人が約96%と、現実と働く人の希望が乖離した状況も起きています。今回は、さまざまな調査結果をもとに、現在のテレワークの実態や、企業側・従業員側のテレワークに対する本音、テレワークを「働き方」として導入するメリットと、実際の導入事例まで詳しくご紹介します。

新型コロナウイルス「5類」移行後のテレワーク利用状況

新型コロナウイルス感染症は、2023年5月に「5類」に移行しました。それに伴って行動制限や、感染した場合の一律の外出自粛要請等が無くなり、その判断は個人や事業者に委ねられることになりました。

コロナ禍における感染予防や外出自粛要請に伴って一気にテレワークが普及しましたが、現状はどの程度実施されているのでしょうか。5類移行後の状況を見てみましょう。

テレワークの現状

2023年4月に帝国データバンクが実施した「新型コロナ5類移行時の働き方の変化に関する実態調査」(有効回答企業数:1万1,428社)を見てみましょう。「5類移行にともなう働き方の変化」を問う質問に対し、

◎新型コロナ前と同じ状態…39.1%

◎新型コロナ前と2割程度異なる…22.5%

◎半分以上異なる…15.5%

◎分からない…22.9%

という結果となりました。コロナ禍以前と同じ状態に戻すという回答が実に約4割となり、オフィス回帰を目指す企業も少なくない事が分かります。

実際に、テレワークの実施率はダウントレンドにある様です。人材大手パーソル総研「第八回・テレワークに関する調査」(調査対象者:正規雇用24,644名)では、2023年7月に全国の就業者に対しテレワークの実態や意識などについて調査しました。結果、従業員のテレワーク実施率(正社員ベース)は22.2%となり、本格的にコロナ禍に突入した2020年春以降最も低い数値となっています。

同調査で、テレワークを実施していない人(正社員)にその理由を聞いたところ、そもそも「テレワークで行える業務ではない(40.4%)」が最多数となっています。それ以外の理由としては、「テレワーク制度が整備されていない(33.7%)」が上位となっており、この他にも「ICT環境が整備されていない」など、会社側がテレワークに消極的な姿勢であることが見えてきました。

【出典】新型コロナ「5 類」移行時の働き方の変化に関する実態調/帝国データバンク

【出典】第八回・テレワークに関する調査/パーソル総合研究所

企業はなぜテレワークを縮小するのか

ご紹介したように、コロナ禍でテレワークが普及したものの5類移行で再び出社に戻る企業が少なくありません。テレワークは、なぜダウントレンドとなっているのでしょうか。

テレワークのデメリット(企業側)

2022年2月の帝国データバンク「企業のテレワーク実施状況と感じたメリット・デメリット」の調査(有効回答企業数:1,837社)を見てみましょう。同調査において、テレワークを実施している企業は31.5%でした。その中で、テレワークに対し「メリットの方が多い」と回答した企業が15.1%だったのに対し、「デメリットの方が多い」と回答した企業は16.4%となりました。テレワークを実施している企業だけで見れば、実に約52%がデメリットを強く感じていることになります。

その内容としては、

◎社内コミュニケーションが減少する、意志疎通が困難…26.6%

◎できる業務が限られる…19.3%

◎進捗や成果が把握しにくい…14.6%

◎業務効率が落ちる、トラブル時の対応遅延…13.0%

◎取引先や顧客との意思疎通や親密な対応が困難…9.6%

となっています。取引先も含め、主にコミュニケーションに課題がある様です。確かに、メールや社内SNS等のやりとりの場合、文章から本音が読み取れなかったり、メッセージのタイムラグが発生したりします。相手の表情が見えないため、気軽なコミュニケーションが取りづらいという声も聞かれます。また、Zoomなどオンライン会議等では同時に複数人の会話が難しく、議論になりづらいという悩みもある様です。

マネジメント層からは、調査の回答にもあったように「進捗が把握できない」「仕事の様子が見えず、評価しづらい」などの声も挙がっています。

【出典】企業のテレワーク実施状況と感じたメリット・デメリット/帝国データバンク

テレワークのデメリット(従業員側)

では、働く側はどのように感じているのでしょうか。三菱UFJリサーチ&コンサルティング(厚生労働省委託事業)の「テレワークの労務管理等に関する実態調査」(n1,343名)によると、従業員に対して「テレワークのデメリットとして感じること」について聞いたところ、

◎同僚や部下とのコミュニケーションがとりにくい…56.0%

◎上司とのコミュニケーションがとりにくい…54.4%

◎在宅勤務で可能な業務が限られる…49.1%

◎OA機器が揃っていない…38.6%

◎仕事と仕事以外の時間の切り分けが難しい…30.1%

が上位となっています。やはり、半分以上の従業員が「コミュニケーション」に大きな課題を感じていることが分かります。実際に、筆者の周りで働く人たちにもヒアリングしてみたところ、特に営業職の方々は5類移行後「原則出社している」と話します。業種や職種にもよると思いますが、資料が会社でしか印刷できない、リモートだと気軽な相談がしづらいなど、複合的な要素で出社を選んでいる人が多いようです。中には「会社に行かないと、仕事した気にならない」という人もいました。

【出典】令和3年版厚生労働白書-新型コロナウイルス感染症と社会保障-(P10)/厚生労働省

テレワークを「働き方」の一つとして認めるメリット

テレワークはダウントレンドにあり、その理由を探るためにネガティブな面もご紹介しましたが、働く側としては大きなメリットがあります。

実際に、学研ホールディングスの調査(対象者:681名)では、96.2%が「週1回以上」のリモートワークを希望しています。逆に「毎日出社」を希望する人は全体の3.8%となりました。調査対象が違うため一概には言えませんが、企業側の方針とかなり乖離があるように思えます。

それでは、企業側がテレワークを働き方の一つとして認めるメリットを見てみましょう。

【出典】原則出社はもう古い?毎日出社を希望する人はたったの3.8%/学研ホールディングス

働く側の生産性が向上する

◎通勤時間の時間的コストやストレスなどから解放される
◎突発的な対応が起きにくく、自分の仕事に集中できる

通勤による身体的・精神的な負担と時間的拘束が無くなることは、働く人にとって大きなメリットです。また、オフィスで仕事をしていると、電話や来客対応、突発的な相談やミーティングなど、仕事中にさまざまな事象が発生します。一方で自宅であれば、基本的に自分自身の仕事に集中することができます。結果的に、生産性の向上にも繋がります。

柔軟な働き方を提供できる

◎育児や介護、家事と両立しやすい
◎副業などにチャレンジしやすい

テレワークであれば、家事・育児、そして介護との両立が可能となります。これまで、出産や介護のスタートで退職や時短勤務を選ばざるをえなかった人材も柔軟に働き方を選べるようになり、結果的にエンゲージメントが高まります。また、時間的に余裕ができることで、副業等にチャレンジし、新たなスキルや知見、アイデアを身につける人も増えています。

優秀な人材を獲得しやすい

◎転職活動の際「勤務形態」が重視されている
◎人材の採用範囲が広がる(全国からマッチングできる)

最も大きなメリットは、やはり採用面にあると考えられます。株式会社学情「アフターコロナの転職意向」の調査(対象:20代社会人260名)を見てみると、「新型コロナウイルス禍を経て、仕事選びで重視するようになった点」について「勤務形態(出社・テレワーク)」が60%で1位となっています。「テレワークを経験し、働く場所を柔軟に選択したいと思うようになった」という声も挙がっており、働き方を選べるという点が会社選びに重要なポイントとなっている事が分かります。

また、フルリモートを導入した場合には、オフィスのあるエリアだけでなく、全国から優秀な人材をマッチングする事も可能となります。採用に関して、可能性が大きく広がるでしょう。

【出典】アフターコロナの転職意向/株式会社学情

テレワークを「働き方」として導入している企業

最後に、実際にテレワークを働き方の一つとして取り入れている企業の事例をご紹介します。

NTTグループ

同グループでは、2022年7月に「リモートスタンダード制度」を導入しました。勤務場所を、基本的に「社員の自宅」としています。その目的として、育児や介護で通勤の難しい人が仕事を続けられること。住む場所の自由度を高めることにより、これまで勤務地の都合で発生していた子供の転校や単身赴任などの課題を解消することがあるそうです。この制度の導入により、人材確保・生産性向上・事業継続性の向上の3つを期待しています。

【参考】NTTがテレワークを実施!理由や工夫・取り組み方について解説/docomo business
https://www.ntt.com/business/services/bs-ss-crm/work-style-innovation/droppin/lp/dc3.html

サイボウズ

IT大手サイボウズ社では、コロナ禍以前より「100人いれば100通りの働き方」を掲げ、社員が「自分らしく」働ける制度を導入してきました。中でもリモートワークをスムーズに運用するため、同社では「制度」「ツール」「風土」の三つの要素で支えています。例えば「制度」の面では、ライフスタイルに合わせた勤務時間や場所が選択できたり、自宅の勤務環境を整えるための手当が毎月支払われたりします。また、制度はメンバーの声をもとに、ブラッシュアップされ続けているそうです。

【参考】職場を知る リモートワーク/サイボウズ採用サイト
https://cybozu.co.jp/recruit/workplace/remotework/

パーソルキャリア

人材大手パーソルキャリアでは、社員の置かれている状況によって、例えば「自宅」などワークスペースを選択することができます。「フルリモート勤務社員」という雇用形態もあり、全国にある30拠点のどこかのオフィスに出社が可能な範囲に居住していれば、国内のどこに居ても働くことが可能です。

【参考】はたらく環境/パーソルキャリア
https://www.persol-career.co.jp/recruit/career/culture/working-environment/

【おわりに】

いかがでしたか?筆者の取引先企業でも、コロナ禍が明けてからの対応は分かれています。経営層がコロナ禍のコミュニケーションに課題を感じ、基本的に出社を推奨している企業。テレワークが定着し、体制も整ったため働き方が選べるようになった企業。中には、フルリモート可能な働き方を導入し、海外に住む日本人社員を採用したケースもあります。
従業員側も、フルリモート企業を求めて転職活動している人、テレワークが可能なのに本人の希望で出社している人、さまざまです。今回ヒアリングしてみて、希望する働き方が多様化していると感じました。企業はその多様性を認め、一人ひとりに合った働き方が選べる体制の整備が必要なタイミングにきているのではないかと思いました。

この記事を書いたひと

三神早耶(みかみさや)

大学卒業後、広告代理店に入社。企画営業と制作進行管理を兼務。その後、出版社でコンサルティング営業、国立大学でeラーニングツールの運営や広報サポートなどを担当し、2016年よりフリーライターに。経営者向けウェブメディア等で、経営者インタビュー、組織改革、DXなどについて取材・執筆。