いま注目の「スマートワーク」とは?導入の効果や取り組み事例を解説!

テレワーク,働き方

ICTなどの最新技術を活用した柔軟な働き方を「スマートワーク」と呼びます。スマートワークを推進すれば、時間や場所にとらわれない多様な働き方ができ、従業員と企業の双方がさまざまなメリットを享受できます。

この記事では、スマートワークという言葉の定義や取り組むことで得られるメリットなどについて解説します。

意味・定義を説明できる?令和の企業が知っておくべき「スマートワーク」とは

官民一体で働き方改革に力を入れている中、ワークライフバランスを実現する手段としてスマートワークへの関心が高まっています。ここでは、スマートワークという言葉の意味や、テレワークとの違いについて解説します。

働き方改革の一環として注目される「スマートワーク」

スマートワークとは、ICT(情報通信技術)を活用してこれまで不可能だった働き方を可能にするワークスタイルのことです。スマートワークという概念に明確な定義はないものの、現状ではテレワークと同じような意味合いで使用されるケースが多く見受けられます。

スマートワークは主に労働生産性の向上を目的としており、ICTを活用して時間や場所にとらわれず柔軟に働けるようにしたり、IoT(モノのインターネット)を通じてそれまで人間が行っていた業務を自動化したり、といった取り組みが代表例として挙げられます。

スマートワークが生まれた背景には、少子高齢化による労働力不足、育児・介護にともなう雇用維持の難しさ、長時間労働といったさまざまな社会問題が背景にあります。企業にとってこれらは喫緊に解決すべき課題であり、その解決策の一手段としてスマートワークが期待されているのです。

テレワークや在宅勤務との違いはどこにある?

テレワークと同義のように用いられているスマートワークですが、厳密に言えば、テレワークも在宅勤務もスマートワークの取り組みの一つです。前述したように、スマートワークではICTを活用して現状の働き方や業務を改善し、労働生産性を高めることを目指します。

インターネットやモバイルデバイスを用いて、カフェや自宅など好きな場所で働けるテレワークは、スマートワークを具現化した働き方といってよいでしょう。

短時間労働など、「働く時間を短くする」だけの取り組みはスマートワークに当たらない

時短勤務とは、育児・介護中の人が仕事との両立を図れるように、1日の所定労働時間を通常の8時間よりも1~2時間ほど短縮する働き方のことです。時短勤務とスマートワークは、家庭の事情でフルタイムでは働けない人の雇用維持や、多様な働き方を可能にするという共通のメリットがあるものの、本来の目的はそれぞれ異なります。

スマートワークの本質は、労働生産性を高めることです。したがって、取り組みの結果として労働時間が短縮されることはありますが、単に働く時間を短くするだけの時短勤務はスマートワークには該当しません。

ニューノーマルな働き方を推進!スマートワークを実現する制度の具体例

スマートワークを実現する新しい働き方には、テレワーク以外にもいくつか種類があります。ここでは、代表的なワークスタイルの具体例を紹介します。

場所に捉われず働く「テレワーク・リモートワーク」

「テレワーク」や「リモートワーク」は、ICTを利用することで、時間や場所にとらわれずに働くというスマートワークを象徴する働き方です。新型コロナウイルスの感染拡大により、一気に導入する企業が増えています。

テレワークには、主に自宅で仕事を行う「在宅勤務」をはじめ、移動の多い営業マンなどが駅や移動中の乗り物、カフェなどで仕事をする「モバイルワーク」、コワーキングスペースやサテライトオフィスといった、第三のオフィスで働く「サードプレイスオフィス勤務」の3種類です。

テレワークのメリットとしては、育児や介護で出社が難しい従業員の離職を防ぐ効果のほか、通勤や移動時間の削減と時間の有効活用、満員電車によるストレスからの解放などが挙げられます。

働く時間に縛られない「フレックスタイム・スーパーフレックスタイム制」

「フレックスタイム制」とは、一定期間においてあらかじめ定められた総労働時間の範囲内であれば、従業員自らが始業時間と終業時間を自由に決められる勤務形態のことです。

一般的なフレックスタイム制では、1日のうち必ず出勤していなければならない「コアタイム」を設けるケースが大半です。ただ、最近ではまったくコアタイムを設けない「スーパーフレックスタイム制」を導入している企業も徐々に増えてきています。

この制度を活用すれば、通勤ラッシュの時間を避けて出社や退社ができるため、満員電車で余計な体力を消耗せずに済みます。通勤時間を読書や勉強にも充てやすくもなるでしょう。

また、自分の裁量で仕事のスケジュールを管理できるため、仕事と私生活のバランスが取りやすいというのがメリットです。

有給休暇の取得促進につながる「ワーケーション」

「ワーケーション」とは、ワークとバケーションを組み合わせた造語で、観光地などの休暇先でテレワークする過ごし方のことを指します。通常のテレワークとの違いは、まず旅行がありきで、休暇を楽しみつつ仕事をするという点です。

ワーケーションのメリットは、有給休暇取得率の向上や従業員の健康促進が期待できることです。仕事と休暇の2択に加えて新しい働き方の選択肢が増えることは、従業員のワークライフバランスを推進する上でプラスに働くことはもちろん、自由な働き方を採用している企業として、ブランド力の向上にもつながります。

どんな効果がある?企業がスマートワークを取り入れる2つの大きなメリット

企業がスマートワークを取り入れる主なメリットとしては、労働生産性の向上と人材の確保や流出防止という2つが挙げられます。以下でそれぞれを詳しく解説します。

スマートワークを取り入れる主なメリット

業務効率化や、ワークライフバランスの実現による労働生産性の向上

働く時間と場所が自由になると、ワークライフバランスが整い、それにともなってプライベートの時間も確保しやすくなります。家族と過ごす時間や趣味を楽しむ時間が増えれば、心身のリフレッシュが図られ、仕事にも前向きに取り組めることでしょう。

そうすることで仕事への意欲も高まり、増えた余暇を活用して自己啓発に取り組む従業員が増え、結果として企業全体の生産性の向上も見込めます。また、通勤や移動にかけていた時間を、より優先度の高い業務に振り分けるなど、時間を有効活用することも可能です。

オフィス勤務と違って同僚から話しかけられたり、電話対応をしなければならなかったり、作業を中断させられることもないため、集中して業務に取り組めるようになるかもしれません。

働くことを断念せざるを得なかった優秀な人材の確保や、流出防止につながる

スマートワークは、企業の雇用維持やブランディングの手段としても注目されています。テレワークやフレックス制を導入すれば、育児や介護との両立のため勤務時間に制限があり、働きたくてもフルタイムで働けなかった人材の離職防止にもつながります。

また、ライフスタイルに合わせて自由に働き方を選択できることは、求職者や学生に向けたアピールにもなります。魅力的な企業として認知されることで、優秀な人材が集まりやすくなるでしょう。

ここに注目!スマートワークで企業が働き方改革を実現するために重要なポイント

スマートワークを推進するにあたって、企業はどのようなポイントに注意すればよいのでしょうか。以下では、各種制度の整備とセキュリティ対策の2点について解説します。

各種制度の整備

テレワークやワーケーションを導入する際には、労務管理や業務の進捗管理の方法、人事評価制度などを新たに整備することが必要です。PCのログ管理や勤怠管理ツールなどを活用し、従業員の労働時間をきちんと管理することで、サボりや長時間労働を防止できるでしょう。

人事評価では目標管理制度を採用し、事前に決めておいた目標の達成度合を評価することで、上司の監視が行き届かないテレワーク下であっても適正な評価が可能です。

セキュリティ対策

スマートワーク推進の一環でテレワークを導入する場合、不正アクセスや情報漏えいリスクへの対策が不可欠です。データの取り扱いや社用端末の持ち出しに関しては、事前にセキュリティガイドラインを策定し、従業員に遵守させるようにしましょう。

利用する端末は会社が許可したもののみとし、業務で使うシステムや外部のサービスについても、会社がきちんと把握しておくことが大切です。また、重要な情報にはアクセス制限をかけて閲覧できる人を限定し、情報データそのものにパスワードを設定するといった対策も欠かせません。

社用端末の紛失・盗難に備え、端末の位置情報を検出できるようにしておくことも有効です。

成功のコツは?参考にしたい、スマートワークの取り組み事例

最後に、「日経Smart Work大賞2020」で2年連続大賞を受賞し、初の殿堂入り企業となったサントリーホールディングスにおけるスマートワークの取り組み事例について紹介します。

「人材活用力」「イノベーション力」「市場開拓力」の主要3部門で最高評価を獲得した同社ですが、とりわけ高く評価されたのが、多様で柔軟な働き方を実現している点です。具体的にはフレックス勤務の拡充やサードプレイスオフィスの導入によるテレワークの推進、遠隔会議ツールやロボットを活用した業務改革といった取り組みです。

また、研究開発部門では裁量労働制を導入するなど、各業務に即した働き方改革を推進していることも大きな特長といえるでしょう。

状況に応じてスマートワークを取り入れよう

テレワークに代表されるスマートワークは、日本社会を取り巻く、労働力不足や労働生産性の低さといった社会的課題を乗り越えていく上で、欠かすことのできない概念です。従業員のワークライフバランスを適正化するためにも、ICTを活用した働き方改革は、今後ますます加速していくことが予想されます。とはいえ、単にテレワークやフレックスといった制度を採用するだけでなく、制度に合わせて新たに労務管理や人事評価制度の方法を整備し、セキュリティ対策をしっかり行うことも必要です。これらのポイントを押さえておくことで、スマートワークがスムーズに実現できることでしょう。