「褒められたい!」「貢献したい!」イマドキ【Z世代】社員とのコミュニケーションのポイントとは!?

働き方

ある調査によると、Z世代のマネジメントに難しさを感じている「上司」は約56%もいるそう。それもそのはず。上司にあたる、30〜40代の世代とは、育ってきた環境や価値観がまったく違うのですから…。今回は、「Z世代」の育ってきた環境と特徴、そして仕事観や「上司に望むこと」などを、調査結果をもとに深堀りします。その上で、上司としてどのように接すれば良いのかを、成功事例と共に解説します。

そもそもZ世代とは

諸説ありますが、Z世代は主に1990年代後半〜2010年代序盤に生まれた世代を指すと言われています。そもそも「Z」とは世代を指す言葉で、米国でこの世代を「ジェネレーションZ」と呼ぶことから、日本でも「Z世代」と呼ばれるようになったそうです。

それでは、Z世代はどのような環境で育ち、どのような特徴があるのか見てみましょう。

デジタルネイティブでITリテラシーが高い

1995年にWindows95が発売されて以降、インターネットやデジタルデバイス、SNSが普及しました。初代iPhoneの発売は2007年。Z世代の中には、生まれる前からiPhoneが普及していた人たちもいるのです。そのため、そもそもITリテラシーが高く、SNSなどにも慣れているため「オープンコミュニケーション」を好む傾向にあると言われます。

「自分らしさ」を大切に/多様性を認める傾向

SNSの普及などと共に、情報が多様化したり、個人が積極的に発信したりできるようになったことから「みんなと同じ」ではなく「自分らしさ」を求めます。また、自分以外に対しても「多様性」を認める傾向があると言われています。

安定志向

Z世代が育った時代には、東日本大震災やリーマンショックなど、社会的に大きな動きがありました。大不況や不安定な社会情勢を、リアルに経験しています。そのため、現実主義で「安定」を求めると言われています。

承認欲求が強い

Z世代は、とにかく「承認欲求が強い」と言われています。背景に、SNSなどでの積極的な配信に対し「いいね!」が付くことで、日常的に「承認」される経験が多いからだと言われています。

「Z世代」の女性が多く働く企業を取材させていただいたことがあります。同社では離職率が高いことから「給与を上げる」「福利厚生を充実させる」など、それまで一般的とされていた改善施策を試みました。しかし、Z世代にはまったく響かなかった…。社員たちを観察してみると、彼女たちは自撮りなどをSNSにアップし、たくさんの「いいね!」が付くことを喜んでいました。「承認欲求だ」と感じた管理職は、社内SNSを導入し、社員同士でお互いのいいところ、感謝すべきところをアップする仕組みを作ったそう。それによって、離職率が1/3にまで減少したということでした。まさに「承認欲求」を満たしたことで起きた、組織改革だなと感じました。

Z世代とのコミュニケーションに感じる課題

それでは、Z世代を部下に持つ上司は、価値観の違う世代との接し方についてどう考えているのでしょうか。月間総務の調査「Z世代のマネジメントについての調査(2022年)」を見てみましょう。

同調査の「Z世代社員のマネジメントに難しさを感じますか」という問いに対して、

◎とても感じる…8.2%

◎やや感じる…47.5%

◎世代による違いは無い…44.3%

と、全体の半分以上が難しさを感じているという結果が出ています。具体的な内容を見てみると、

◎モチベーションアップのために、どのようなアプローチが効果的なのかがわからない

◎言われたことはとりあえずこなすが、それ以外はしないし、自分で考えない

◎我々の世代の考え方と異なり、ハラスメント扱いされることが多い

などの声が挙がっています。しかし中には「上の世代の現場の社員が価値観のシフトができていない」という意見も…。

Z世代の「上司」にあたる30代〜40代は「就職氷河期」を経験し、まだまだ「年功序列」「終身雇用」の名残を経験した世代。「長時間労働」は当たり前で、「上司の言うことは絶対」「我慢が美徳」のような感覚を持っている人も少なくありません。子どもの頃から、「男は男らしく、女は女らしく」というような価値観の中で育ち、「テレビ」「新聞」などの限られたメディアから情報を得ていました。

そんな価値観と、先ほどご紹介したZ世代の価値観は、まさに真逆。Z世代をうまく理解するためには、まず現代の価値観について学ぶ必要があるのかも知れません…。

【出典】Z世代のマネジメントは「難しい」の回答が半数以上。「ハラスメント扱いされる」といった悩みも/月間総務オンライン

Z世代が考えていること

一方のZ世代は「働くこと」に対してどのように考えているのでしょうか。

Z世代の仕事観

日本能率協会マネジメントセンターの調査「イマドキ新人社員の仕事に対する意識調査2021」を見てみましょう。

まず「自分自身が成長することについて、どのように考えますか」という問いに対して、

◎無理のない範囲で業務に取り組みたい…54.4%

◎一時的に業務の負荷や労働時間が増えても挑戦したい…45.6%

となりました。負荷をかけてまで成長を望まない、という価値観の人が若干多いようです。

リクルートマネジメントソリューションズの調査「新入社員意識調査2022」の、「あなたが仕事をするうえで重視することは何ですか?(2つまでに複数回答可)」という問いに対しては、

◎貢献(人や社会の役に立つ、感謝される)…31.9%

◎成長(自分が成長できる)…28.4%

となっています。自身の成長よりも「貢献」が上回っている状態です。確かに、現代の若者は「社会貢献したい」という考えが強いと言われています。その背景には「感謝されたい」「役に立ったと実感したい」という想いもあり、最終的に「承認欲求」にも繋がるのかも知れません。

Z世代が上司に望むこと

それでは、Z世代とどのようにコミュニケーションをとれば良いのでしょうか。先出の「新入社員意識調査2022」では、「あなたが上司に期待することは何ですか?(最大3つまでの複数回答可)」として以下の点が上位となっています。

◎相手の意見や考えに耳を傾けること…54.1%

◎一人ひとりに対して丁寧に指導すること…44.2%

◎好き嫌いで判断しないこと…33.5%

◎職場の人間関係に気を配ること…32.6%

◎よいこと・よい仕事をほめること…32.6%/p>

Z世代は「多様性」が叫ばれる時代に育ち、「一人ひとり違うんだ」「違っていいんだ」ということを当たり前に受け入れています。そのため、一人ひとりの声に耳を傾け、個別に丁寧に指導することを望むのでしょう。また、「褒める」という点については、別の調査(イマドキ新人社員の仕事に対する意識調査2021)でも、

Q:自分はどのように指導されることで、成長していけると考えますか

◎できている点に目を向け、褒めてもらう…70.0%

◎できていない点に目を向け、指摘される…30.0%

という結果に。端的に言うと、Z世代は「褒められて伸びるタイプ」を自覚しているということなのでしょう。

筆者が育った昭和〜平成の時代は、「褒める」というよりも「厳しく指導する」「できなければ罰を与える」という傾向が強かったように思います。つまり「褒められていない」世代が、部下を「褒める」必要に迫られている…。経験の無いことを実施することは、簡単そうに見えてなかなか難しいのでは、と感じています。

【出典】イマドキ新人社員の仕事に対する意識調査2021/JMAM

【出典】新入社員意識調査2022/リクルートマネジメントソリューションズ

Z世代とのコミュニケーションで気を付けること

それでは、実際にZ世代とはどのようにコミュニケーションをとればいいのでしょうか?Z世代の価値観から見えてきた、接し方の3つのポイントについて解説します。

担当する業務の「目的」を明確に伝える

Z世代の仕事観として「貢献」を重視していることが分かっています。ただ「自分は貢献できている」と感じるためには、そもそもその仕事が「何のためにやっているのか」「誰の役に立っているのか」を把握していなければなりません。これは、経営理念などにも関わってくるかも知れませんが、会社はこういうビジョンを持って運営している、そのうち、あなたの仕事はこの部分で、こういう所に役立っているということの理解を、しっかり促しておく必要があるでしょう。

会話する際は、「傾聴」姿勢を忘れない

傾聴とは「相手の話に耳を傾け、熱心に聞くこと」を意味する言葉です。ただ受動的に話を聞くのではなく、その話を聞きながら、相手を受け入れ、共感することが大切。前提として「Z世代」と括るのではなく、部下は一人ひとり違うんだということを、上司が認識しておくことも重要でしょう。近年導入する企業が増えてきている「1on1」を導入することも一つの方法です。定期的にざっくばらんに話を聴く機会を設けることで、関係性の構築だけでなく、その人の考え方や価値観をしっかり把握することにも繋がります。

日々の成長を褒める、感謝する

先にご紹介した調査結果でも、Z世代は「褒められたい」という欲求が強いように思います。「承認欲求」の表れなのかも知れませんが、褒めるためには、まず一人ひとりの動きを丁寧に見ておく必要があるでしょう。「褒めるタイミングが無い」というお悩みもよく聞かれますが、「数字を達成した」「施策が表彰された」など大きなことではなく、日々の少しずつの成長でも、それは賞賛に値します。

実際に、若手社員に対して「日々の成長を自覚させる施策で、自律的な組織に変わった」という事例があります。大阪市のスタートアップ企業フルカイテン株式会社では、定期的に実施している1on1において、

◎自分に起きた小さな変化・進化は何?

◎チームに起きた小さな変化・進化は何?

など、あらかじめ決まった質問事項について部下が考え、話します。そして、自分で自分の小さな変化に気づく「意識」を醸成することで、社員の自己肯定感を高めているのです。また「チームに起きた小さな変化」の質問では、周囲の人の成長にも気づけるようにしています。それを当人に伝えることで、その社員も「褒められた」「認められた」と感じ、自己肯定感がアップする。そうして組織全体の士気やモチベーションが上がっていくのです。Z世代に関わらず、この「褒める」「感謝する」は、現代の社内コミュニケーションにおいて非常に重要な要素になっていると感じます。

【参考】社員がいきいきし始めた!/SDGs×AI|大量廃棄を無くす「FULL KAITEN」

氷河期世代とは真逆の価値観 まずは「理解」することから…

いかがでしたか?私も仕事で、Z世代の方とご一緒することがあります。最初に驚いたのは、彼らはまだ日本語訳も追いついていないようなITツールを、颯爽と使いこなしていたこと。「とりあえずやってみる」と、新しいものを抵抗無くどんどん受け入れている印象でした。また、それぞれがTwitterやnoteなどのアカウントを持っていて、積極的に自分自身の考え方を発信しています。ポジティブなこともネガティブなことも、隠さずに曝け出しているのには驚きました。堂々と趣味と仕事を両立し、「趣味で有給を使うこと」にもまったく抵抗が無い。むしろ当たり前になっています。(私は、まだまだ休むことに罪悪感を覚えてしまいます)上司にあたる、氷河期世代などとは真逆の価値観を持った彼ら。まずは、上司側が「時代」に合った価値観を本当の意味で理解し、受け入れる努力が必要だろうと感じました。

この記事を書いたひと

三神早耶(みかみさや)

大学卒業後、広告代理店に入社。企画営業と制作進行管理を兼務。その後、出版社でコンサルティング営業、国立大学でeラーニングツールの運営や広報サポートなどを担当し、2016年よりフリーライターに。経営者向けウェブメディア等で、経営者インタビュー、組織改革、DXなどについて取材・執筆。