取り組んでいるのはわずか15%!?企業のDX化を阻む課題と【DX人材育成プログラム】5選

働き方

「デジタル庁」も発足し、より社会において「DX(デジタルトランスフォーメーション)」が知られるようになりました。デジタル庁は5年間で「デジタル時代の官民のインフラ」を作り上げ、さらにはデジタル人材を230万人育成するという目標も掲げています。
しかし現状では、日本において企業のDX化は進んでおらず、その課題も明確になってきています。今回は、日本のDX推進の現状や、それを阻む大きな課題。そして、課題解決のための「DX人材育成プログラム」を5つ厳選してご紹介します。

企業のDX推進の現状

近年、企業のDX化が叫ばれています。2021年9月には「デジタル庁」も発足し、官民のインフラ整備だけでなく、企業の取り組みや人材育成も推進しています。この背景には、少子高齢化による労働力の減少や、生産性向上などの狙いがあります。

では実際に、どの程度の企業がDXに取り組んでいるのでしょうか。

実際に取り組んでいる企業はわずか15%

帝国データバンク「DX推進に関する企業の意識調査(2022年)」(有効回答企業数10,769社)を見てみると、「DXへの理解と取り組み」に関する質問への回答として、以下のような結果が出ています。

◎言葉の意味を理解しているが、取り組んでいない…31.6%

◎言葉の意味を理解し、取り組みたいと思っている…25.7%

◎言葉の意味を理解し、取り組んでいる…15.7%

◎言葉は知っているが、意味を理解できない…13.3%

◎言葉も知らない…6.4%

つまり、現在取り組んでいるのはわずか15.7%にとどまっている、ということです。

【出典】DX推進に関する企業の意識調査/帝国データバンク

企業の具体的な取り組み

同じ調査で、DX化に取り組んでいる企業の具体的な内容については、

◎オンライン会議設備の導入…82.7%

◎ペーパーレス化…77.6%

◎テレワークなどリモート設備の導入…69.5%

◎アナログ・物理データのデジタルデータ化…68.3%

◎社内研修のオンライン化・デジタル化…45.1%

という項目が上位となりました。いずれも、ITツールなどにより容易に導入できることや、コロナ禍で必要に迫られたという側面もありそうです。

一方で、業務効率化だけでなく、実際の経営にも関わる「本格的なDX」に取り組む企業も少なくありません。

◎既存製品・サービスの高付加価値化…27.8%

◎新規製品・サービスの創出…24.2%

◎ビジネスモデルの変革…20.2%

【出典】DX推進に関する企業の意識調査/帝国データバンク

これは、DXが単に業務効率化やテレワーク推進に繋がるという「手段」ではなく、企業の経営そのものに関わる、避けて通れない課題であることを認識している企業が増えていることの表れであると思われます。

実際に、電通デジタル「日本における企業のDX調査(2021年度)」(n=2,377)を見てみると、「コロナ禍においてDXの重要度が変化したか」という問いについて、

◎DXの重要度が上がり経営テーマとなった…13.6%

◎DXの重要度があがった…51.5%

という結果となり、実に65.1%の企業がその重要性が上がったと回答しています。その中でも「経営テーマとなった」と回答したのは13.6%。これだけITが普及した社会で競争優位性を保つには、DX化が必要不可欠なのです。

【出典】日本における企業のDX調査(2021年度)/電通デジタル

デジタル化・DX化の課題

DX化の重要性が認識されているにも関わらず、なぜ日本ではこれほどまでにDXが進まないのでしょうか。総務省が発表した「令和3年版情報通信白書」によると、「デジタル・トランスフォーメーションを進める際の課題」として、日本は「人材不足」を挙げる企業が最も多いことが分かっています。

◎人材不足…53.1%

◎費用対効果が不明…32.8%

◎資金不足…26.9%

◎既存システムとの関係性…25.8%

◎ICTなど技術的な知識不足…23.8%

【出典】日本企業の経営課題2021

DX化の人材不足をどう解消するか〜DX人材育成サービス5選〜

日本のDXが進まない大きな要因は、人材不足にあることが分かりました。それでは、どうやってそれを解決すれば良いのでしょうか。方法は、外部から人材を採用するか、「社内で育成」という2つの方向性があると思いますが、今回は社内でDX人材育成を進めるためのサービスを厳選してご紹介します。

アクセンチュア/DX University

【ポイント】

◎デジタル人材育成などにおける6つの「陥りがちな罠」を明確化
◎デジタル変革を担う人材や組織創出の30施策を用意
◎人材定義/評価・採用・選抜/人材育成/適正配置・モニタの4Dサイクル

【詳細】

総合コンサルティング企業アクセンチュアでは、まず自社内のDX人材育成のため「一般教養」「専門領域」に分けた育成方法をとっています。一般教養では、ビジネスに活用できる最先端のITトレンド情報の理解を促しています。専門領域については、自身が担当するクライアントなどに応じて、さらに深い知識を学びます。

それらの人材育成ノウハウから生まれたのが「DX University」です。同社では日本企業のデジタル人材育成を阻む理由を「6つの罠」として分析し、明確化。それらを解消するため、あらかじめ30の施策を用意しています。

研修はまず、組織のビジョン、現状、人事制度などを理解・検討した上で、施策を組み合わせて実施します。その企業にとって必要なデジタル人材の要件や、その人材をどう選ぶのかなど「人材定義」「評価・採用・選抜」「人材育成」「適正配置・モニタ」をセットにした4Dサイクルを回し、最終的には事業の創出や成果に繋げる狙いです。

【URL】
https://www.accenture.com/jp-ja/insights/consulting/dx-university

三菱総合研究所/デジタル人材育成

【ポイント】

◎企業に必要な人材を「4類型」に分類して検討
◎企業のDX戦略・デジタル人材戦略に合わせたプログラムを設計
◎コンサルタントがOJTのメンターとして対応

【詳細】

総合シンクタンク三菱総合研究所では、DX推進に必要なスキルについて「技術系スキル」と、ビジネス・サービス設計や組織・プロジェクト管理の「ビジネス系スキル」の2要素あると考えています。そんななかで、デジタル人材の役割も単一のものではなく「プロデューサー」「DXマネージャー」「ビジネス・サービス担当」「システム・技術担当」と4類型に設定しており、それぞれに明確な役割が割り振られています。

同社では、まず企業のDX戦略やデジタル人材戦略を把握し、そのためにどのような役割・スキルの人材が必要かを検討。その上で、「デジタル人材育成プログラム」の構築から研修、コンテンツ提供まで全体をサポートします。

【URL】
https://www.mri.co.jp/service/digital-human-resource-training.html

NEC/NECアカデミー for DX

【ポイント】

◎DXリテラシー教育からDXリーダー育成まで幅広く対応
◎企業のDX人材戦略の策定から人材育成、文化の浸透までサポート
◎2024年までに6,000人の育成を目指す

【詳細】

日本最大のコンピューターメーカーであるNECが提供する「NECアカデミー for DX」は、同社で培ったデジタル人材育成ノウハウと、これまで実績のあるAI・セキュリティ・デザイン施工などの研修プログラムなどを加えた人材育成サービス。

DXを会社の一部門、一部の人だけの課題とせず、全てのビジネスパーソンに必要とされる「DXリテラシー教育」も実施。その上で、DXマネジメント、DX推進人材、DX専門人材、DXリーダーまで、幅広い層の人材育成に対応しています。もちろん人材戦略の策定から伴走し、最終的には社内におけるDX文化の浸透までサポートしてくれます。

【URL】
https://jpn.nec.com/dx/nec-academy/

経済産業省/マナビDX Quest

【ポイント】

◎経済産業省が主管のデジタル人材育成プログラム
◎実践的なケーススタディプログラムと現場研修もあり
◎講師や教科書は無いが、コミュニティが生まれる

【詳細】

経済産業省が主管する育成プログラムで、2022年9月〜2023年2月中旬の期間で、1,800名を対象に実施されます。(募集期間が決まっているので、要確認)とにかく実践重視で、ケーススタディで学んだ後、実際に地域の中小企業と協働し、課題解決型現場研修を実施します。

企業のビジネスを理解し、DXを構想した上で技術を生かして課題を解決する一連の流れを体験できます。また、同時期に学ぶ参加者は仲間となり、オンラインツールを通して交流できます。仕事や学業と両立ができるよう、平日夜・土日祝日中心となっています。運営は戦略系コンサルティングファームで、主に大手企業のDX支援を手がけるボストン・コンサルティング・グループ(BCG)です。

【URL】
https://manabi-dx.ipa.go.jp/manabi-dx-quest-2022/

NTT Data/Dive in DX

【ポイント】

◎DX推進のため「ビジネス」と「テクノロジ」の一体化を重視
◎NTTデータグループで社内外に提供してきたプログラムがベース
◎人材育成・組織開発に関するニーズの把握からスタート

【詳細】

システムインテグレーターの先駆けでもあるNTTデータでは、2020年6月より「Dive in DX」を提供しています。システムデザイン、デジタル技術、サービスや業務デザイン、新ビジネス構想の4つのインテリジェンスを重視し、それらの相互連携を実現できるようサポートします。

また、事業部門などのビジネスサイド、IT部門などのテクノロジーサイド、双方のコラボレーションが必要不可欠と考え、いずれの人材育成にも対応。さらには、マネージャー、リーダー、メンバーなど各層ごとのプログラムが分かれており、自社で育成したい部門・対象に合わせた研修が可能です。

【URL】
https://www.nttdata-univ.co.jp/dx/

2024年までに230万人のデジタル人材育成!DX化の加速に期待

いかがでしたか?DXは企業課題になっているのに、推進できている企業は圧倒的に少なく、その要因は「ヒト」でした。デジタル庁の後押しもあり、国は2024年までに230万人のデジタル推進人材を育成しようとしています。背景には、日本企業でDXが遅れているということもありますが、国レベルでいえば、他国(アメリカ・カナダ・イギリス・ドイツ・フランス)と比較して日本はIT人材が「IT企業」のみに偏っているということもあるようです。2230万人の人材が育てば、一気に企業のDX推進は加速するでしょう。人口減少や働き方改革への対応、さらには新規ビジネスの創出など企業活動への影響が大きい「DX」。今後生まれてくる多くのDX人材に期待大です!

この記事を書いたひと

三神早耶(みかみさや)

大学卒業後、広告代理店に入社。企画営業と制作進行管理を兼務。その後、出版社でコンサルティング営業、国立大学でeラーニングツールの運営や広報サポートなどを担当し、2016年よりフリーライターに。経営者向けウェブメディア等で、経営者インタビュー、組織改革、DXなどについて取材・執筆。