BCP(事業継続計画)とは?具体的な施策、BCPとしての「テレワーク」導入メリットも

テレワーク,働き方

BCP(事業継続計画)とは、自然災害や感染症などのリスクにより企業活動が困難になることを防ぐ対策のこと。コロナ禍において、BCPに取り組む企業が増えています。取り組みを進めることによって、有事の際に事業継続できるだけでなく、企業価値の向上にもつながると言われています。

今回はこのBCPについて、実施する目的や、日本における実情。具体的な施策から、BCP対策として「テレワーク」を導入する際のメリットまで、事例や調査結果を交えながら詳しくご紹介します。

BCP(事業継続計画)とは

そもそもBCPとは、「Business Continuity Plan」の略で「事業継続計画」を意味する言葉です。これは、自然災害や感染症、その他のリスクにより企業活動の継続が困難になることを防ぐため、企業が普段から取り組む施策のこと。内閣府では、BCPを以下のように定義しています。

“災害時に特定された重要業務が中断しないこと、また万一事業活動が中断した場合に目標復旧時間内に重要な機能を再開させ、業務中断に伴う顧客取引の競合他社への流出、マーケットシェアの低下、企業評価の低下などから企業を守るための経営戦略。バックアップシステムの整備、バックアップオフィスの確保、安否確認の迅速化、要員の確保、生産設備の代替などの対策を実施する(Business Continuity Plan: BCP)。ここでいう計画とは、単なる計画書の意味ではなく、マネジメント全般を含むニュアンスで用いられている。”

【引用】 防災情報のページ 事業継続/内閣府

BCP対策を実施する目的

一番の目的は、有事の際に事業を継続させることではありますが、BCPをしっかり策定し、それを広く周知することで、「企業の信頼度も向上」します。特に、南海トラフ地震や新型コロナウイルスなど、不安要素の多い昨今。取引先を検討する際、それらの対策がしっかりとられている企業をパートナーとして選びたいという企業は少なくないでしょう。有事の際にしっかりと事業継続ができる体制が整っていれば、自社が損害を被るリスクが減少すると予測でき、安心して取引ができるからです。

有事は、いつ起こるか分からないもの。そのときに「事業を止めない」ということは、社内だけでなく取引先や顧客にとっても非常に重要なことなのです。

日本のBCP対策の現状

2020年から新型コロナウイルスが猛威をふるい、その感染拡大などにより企業活動のリスクは増加しています。帝国データバンクの2021年の調査「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査」を見てみると、BCPを「策定している」と回答した企業は17.6%で過去最高に。直近2年間では、特に伸び率が高まっています。規模別では大企業が32%、そして中小企業が14.7%となっています。

各企業が想定しているリスクとしては、1位が自然災害、そして2位が感染症(インフルエンザ、新型ウイルス、SARSなど)となりました。また、2020年にはサイバー犯罪の検挙数が過去最高となったことも影響しているのか、情報セキュリティ上のリスクを挙げる企業も32.9%と、1年前の調査より5.1ポイント上昇しています。

◎自然災害…72.4%
◎感染症(インフルエンザ、新型ウイルス、SARSなど)…60.4%
◎設備の故障…35.8%
◎情報セキュリティ上のリスク…32.9%
◎火災・爆発事故…32.8%

【出典】 事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2021 年)/帝国データバンク

BCP対策の具体例

それでは、実際にBCP施策としてよく取り入れられる事例についてご紹介します。

オフィスの分散化

一つ目は、オフィスの分散化です。災害や火災、停電などで本社機能が停止した場合のリスクを排除するために、基幹システムや本社業務をエリアの違う複数の拠点に分散させる手法です。

実際に、人材大手株式会社パソナグループでは、多様な働き方の実現と、パソナグループ全体のBCP対策として、本社機能を東京都千代田区から兵庫県淡路島に分散することを決めました。2023年には、1,200名の社員が淡路島に拠点を移す構想です。

【参考】 パソナグループ 本社機能を分散、淡路島に移転開始/PASONA

情報のバックアップ体制構築

社員の個人情報、顧客の企業情報、取引履歴など…企業には、貴重な情報が溢れています。これらの管理を甘く見ていると、災害で被災した場合、全てを失うことになりかねません。また、サイバー攻撃などを受けた際に情報漏洩のリスクもあります。

先出の「事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2021 年)」でも、「事業が中断するリスクに備えて実施あるいは検討している内容」について「情報システムのバックアップ」と回答した企業が55.4%と半分を超えています。これは「従業員の安否確認手段の整備(68.5%)」の次に多い数字で、「情報」という企業の重要な経営資源に対する意識が高まっていることが伺えます。

BCPの観点から、情報をバックアップする際には、セキュリティが万全で、有事の際に認証があればどこからでもアクセスできるような、強固でフレキシブルなシステムを選ぶ必要があるでしょう。

【出典】 事業継続計画(BCP)に対する企業の意識調査(2021 年)/帝国データバンク

テレワークの普及

最後に、テレワークの普及です。

総務省の2020年の調査「令和2年通信利用動向調査」を見てみると、企業のテレワークの導入状況は47.5%と前年の20.2%から倍以上に上昇しています。その理由としては「非常時(地震、台風、大雪、感染症の流行など)の事業継続に備えて」が約7割と、企業のBCPに対する意識の向上が見て取れます。

◎非常時(地震、台風、大雪、感染症の流行など)の事業継続に備えて…68.3%
◎勤務者の移動時間の短縮・混雑回避…43.1%
◎業務の効率性(生産性)の向上…29.7%

次の章では、BCP対策としてテレワークを導入するメリットについてご紹介します。

【出典】 令和2年通信利用動向調査の結果/総務省

BCP対策としてテレワークを導入するメリット

企業がBCP対策として「テレワーク」を導入する企業メリットについて、詳しくご紹介します。

自然災害時のスムーズな事業再開

例えば、自然災害でオフィスが被災してしまったとき、会社としての機能は停止してしまいます。そもそも出社できないだけでなく、PCなどの機器が破損したり、物理的な書類やデータを失ってしまう可能性も。主なコミュニケーションを電話やメールに頼っている場合、混乱時に複数人で連携を取ることも困難になります。社員の安否把握にも、時間がかかってしまうでしょう。

一方で「テレワーク」の環境が整っていれば、オフィスが復旧しなくとも、在宅でスムーズに業務を遂行することができます。業務に必要なデータもクラウド上でどこからでもアクセスができ、セキュリティ体制も整っています。また、グループウェアやチャットツールなどを使い、チームや組織でスムーズに連携を取ることができるでしょう。復旧までのスピードアップや、社員の安全確保にもつながります。

感染症対策として社員同士の接触を避けられる

新型コロナウイルスなどの感染症対策にも、大いに役立ちます。テレワーク環境が整っていなければ、感染が拡大するなか、社員は不安な思いを抱えた状態で出社することになります。また、実際に社内で感染者が出てしまった場合には、一定期間業務を停止することになりかねません。

先出の調査でも企業の6割が想定しているリスクとして「感染症」があります。特に新型コロナウイルスの感染リスクを防ぐために、通勤ラッシュなどの三密状態を避けること、なるべく人との接触を避けることが必要となります。その場合に、他人との接触や外出を控えることのできる「テレワーク」は、事業継続の観点からも効果が高いとされています。

有事を想定し、あらゆるリスクを回避する施策が必要

いかがでしたか?自然災害、感染症、火災や故障、サイバー攻撃など、企業活動にはあらゆるリスクが付き纏っています。その際にどのような対策を取るのか、そのためにどのような環境を整備しておくのかが、今企業に求められている大きな課題であると言えます。今後、リスクマネジメントは企業価値を高める重要な要素となるでしょう。中でも「テレワーク」は、社員のワークライフバランスの向上につながるだけでなく、BCP対策としても有効です。まずは、自社が普段どのようなフローで業務を行なっているのかを明確にし、ITツール導入の際の費用対効果なども検討しながら、自社にマッチした対策を取り入れていきましょう。

この記事を書いたひと

三神早耶(みかみさや)

大学卒業後、広告代理店に入社。企画営業と制作進行管理を兼務。その後、出版社でコンサルティング営業、国立大学でeラーニングツールの運営や広報サポートなどを担当し、2016年よりフリーライターに。経営者向けウェブメディア等で、経営者インタビュー、組織改革、DXなどについて取材・執筆。