コロナ「5類」で何が変わる?具体的な変化と、「新たな働き方」についての企業・社員の考え方を徹底分析

働き方

2023年5月8日より、新型コロナウイルスは季節性インフルエンザと同様の「5類」に引き下げられました。これにより、私たち働き方はどう変わるのでしょうか。今回は、5類への移行で具体的に変わることや、コロナ禍が明けた後の「新たな働き方」に関する、企業側そして働く人側の考えや意識の変化について、あらゆる調査結果をもとに考えていきたいと思います。3年以上ぶりにコロナ禍が明け、「社員の働きやすさ」を担保するために、何をすれば良いのか。その参考になれば幸いです。

新型コロナウイルスが「5類」に移行

2023年5月8日、新型コロナウイルスは、それまでの「新型インフルエンザ等感染症」という位置付けから「5類感染症」に引き下げられました。働く人や企業にとって、どのような変化があるのでしょうか?

基本的感染対策の考え方

はじめに、「5類」に移行した事による基本的感染対策の考え方は、以下に変化しています。これまでのように、国が一律に定めるのではなく、事業者へ判断が委ねられます。

基本的感染対策について、政府として一律に対応を求めることはありません。

感染対策の実施については個人・事業者の判断が基本となります。​

基本的感染対策の実施に当たっては、感染対策上の必要性に加え、経済的・社会的合理性や、持続可能性の観点も考慮して、感染対策に取り組んでください。

【出典】新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について/厚生労働省

マスクの着用

最も身近な変化は、マスクの着用ではないでしょうか。これは、既に3月13日から個人の判断に委ねるとされています。ただし、通勤ラッシュの公共交通機関内、医療機関や高齢者施設などの訪問時はマスクの着用が推奨されています。また、妊婦や「がん」「慢性肝臓病」「心血管疾患」などの基礎疾患のある方は、自分自身を守るためのマスク着用が薦められています。
感染した後については、10日間が経過するまではウイルス排出の可能性があるため、不織布マスクの着用などの配慮を求めています。

外出自粛要請

これまで、国が一律に「感染者」「濃厚接触者」に対して外出自粛要請などを実施していましたが、その制限は無くなりました。「外出を控えるかどうかは、個人の判断に委ねられます」としています。ただし、新型コロナウイルスの特性に基づいて「発症日を0日として5日間は外出を控え、かつ熱が下がり、痰や喉の痛みなどの症状が軽快した場合でも、24時間程度は外出を控え様子を見ることが推奨されます」としています。

【出典】新型コロナウイルス療養に関するQ&A/厚生労働省

感染対策

これまで、多くのオフィスで入室時の検温、手指の消毒、オフィスの消毒、アクリル板やパーテーションの設置などの感染対策が取られてきました。こちらも、5月8日移行は対策の効果と時間的・費用的コストを踏まえた費用対効果などを検討した上で、「事業者において実施の要否を判断」となっています。

5月8日移行、早速アクリル版を撤去しているオフィスや施設も少なくないようです。

【出典】新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について/厚生労働省

企業側の「新たな働き方」に関する考え方

マスク着用や感染対策などは事業者に委ねられているものの、実際に世の中の働き方はどう変わるのでしょうか。「5類移行」に向けて、多くのメディアで働き方についての調査が実施されています。まとめて見ていきましょう。

働き方に関する企業の考え方

4月に実施された帝国データバンクの「新型コロナ5類移行時の働き方の変化に関する実態調査」(有効回答企業数:1万1,428社)によると、「5類移行にともなう働き方の変化」について

◎新型コロナ前と同じ状態…39.1%

◎新型コロナ前と2割程度異なる…22.5%

◎新型コロナ前と半分以上異なる…15.5%

という結果となりました。程度は違えど「新型コロナ前と異なる」と回答した企業が38%ある一方で、およそ4割がコロナ前に戻るという状態となっています。ただし、従業員規模が1,000名以上、また業界的には「広告関連」「情報サービス」については、ほぼ半数がコロナ前と異なる働き方を選択しており、規模や事業内容によって大きく変わってきそうです。

IT 大手GMOインターネットグループでは、「原則、週3日出社・週2日在宅勤務」を推奨していたところ、2023年2月21日より「出社を原則」とする働き方にシフトしています。その理由として「顔を合わせて勤務することで、コミュニケーションを円滑化させる」ためとしています。筆者もコロナ禍で企業のリモートワーク等をテーマに取材してきましたが、やはり「対面のコミュニケーション」を重視する企業は多いと感じています。一つは、雑談によって人と人との繋がりや、組織をまたいだ横の関係性ができること。もう一つは、対面で会話することによって議論が活性化し、イノベーションが生まれやすいという背景があるようです。

一方で、NTTグループでは2022年7月1日より、全国どこからでもリモートワークで働ける「リモートスタンダード」を導入。これは、コロナ禍が明けても継続される取り組みです。個人単位での適用や除外も可能で、かなり柔軟な働き方となっています。このように、企業によって対応が二極化している様子です。

【出典】新型コロナ「5 類」移行時の働き方の変化に関する実態調査/帝国データバンク

「テレワーク」は継続されるか

今回のパンデミックで急速に普及したのが「テレワーク」です。ロイター通信の企業向け調査(回答社数:237社)を見てみましょう。「5類に引き下げられて以降も、テレワークの実施形態を変更するか」という趣旨の問いに対し、

◎現在と同様の形態で継続する…42%

◎規模を縮小して継続する…29%

◎すでに実施をやめた…14%

◎もともと実施していない…14%

となっています。「継続する」と回答した企業は71%と、高い数値になっています。その理由としては、採用戦略や、働き方改革、BCP対策など様々でした。今後は、「感染対策」ではなく「社員の働きやすさ」を目的として実施されるケースが多いようです。

【出典】4月ロイター企業調査:コロナ5類後もテレワーク7割継続、働き方改革の一環/ロイター通信

「コロナ禍明け」社員はどのように働きたいのか

実際に働く人たちの意識は、このコロナ禍でどう変化したのでしょうか。

働く人の「仕事観」の変化

まず、このコロナ禍における働く人の「仕事観」の変化について見ていきましょう。

2021年12月に発表されたSOMPOホールディングスの調査「仕事に関する価値観の変容に関する意識調査」(回答者数:1,055名)です。「コロナ禍において、仕事に対する価値観・考え方・向き合い方に変化はありましたか」という問いに対して

◎大きく変わった…13.9%

◎どちらかといえば変わった…30.5%/p>

◎どちらともいえない…26.4%

◎どちらかといえば変わらない…13.3%

◎まったく変わらない…15.8%

という結果となりました。「変わった」と回答し、かつその変化を「ポジティブと受け止めている人」に「コロナ禍での働き方の変化により、何を以前よりも重視したいと思うようになったか」と聞いたところ、

◎プライベートの活動…26.4%

◎暮らし…26.0%

◎家族…23.5%

◎働く意義・目的…23.0%

が上位となっています。仕事に関する価値観が「変わった」人が約44%。その上で、「プライベート」「暮らし」「家族」を重視する人が多いという結果に。他の調査を見ても、やはりコロナ禍で仕事観が変化し、ワークライフバランスを重視するようになったと考える人がかなり増えているようです。

【出典】仕事に対する価値観の変容に関する意識調査/SOMPOホールディングス株式会社

働く人の「働き方」へのニーズ

プライベートを重視する人が増えていますが、実際にどのような働き方を希望しているのでしょうか。

ザイマックス総研の2022年の調査「首都圏オフィスワーカー調査2022」(有効回答:2,060名)によると、「コロナ禍収束後にテレワークを利用したい人」は65.8%にのぼっています。テレワーク以外では、

◎オンライン会議ツールの活用…48.6%

◎どこでもメールやスケジュールがチェックできる仕組みの活用…42.9%

◎モバイルワークができるように、IT端末が会社から支給されている…40.6%

◎仕事でのチャットツールの活用…39.8%

◎外出時でもオフィス同様のネットワーク環境で仕事ができる仕組みの活用…38.2%

などの、施策のニーズが高くなっています。また、「リフレッシュスペース」「食堂・カフェスペース」の設置や、「リモート会議用ブース・個室」など新たな設備を希望する人も多いようで、企業は自社の仕事の特性や従業員の意識などを踏まえた上で、新たな働き方に向けて舵を切る必要があると言えそうです。

【出典】首都圏オフィスワーカー調査2022/ザイマックス総研の研究調査

【おわりに】「原則出社」で生活に影響も…一人ひとりにマッチした対策を

いかがでしたか?筆者の周りでも、コロナ禍でフルリモートワークになっていたものの、5類への移行で出社に切り替わったという人が少なくありません。しかし、小さな子どもを抱える親である場合は、その生活に大きな影響があるようです。例えば、リモートワークであったから、保育園の規定時間内に送迎が可能だったものの、出社となると1日のルーティンに「通勤時間」がプラスされます。そのため、時間的制約ができるだけでなく、生活のゆとりも奪われてしまうそう…。実際に、リモートワークが可能な企業への転職を検討する人も増えているそうです。

「大転職時代」と言われる昨今。有効求人倍率も1.32倍(令和5年4月時点/厚生労働省発表)となっており、売り手市場が続いています。優秀な人材とのエンゲージメントを確保するためにも、企業は今一度、社員の「働き方」への希望を把握し、一人ひとりに合った対応を検討する必要があるのかも知れません。

この記事を書いたひと

三神早耶(みかみさや)

大学卒業後、広告代理店に入社。企画営業と制作進行管理を兼務。その後、出版社でコンサルティング営業、国立大学でeラーニングツールの運営や広報サポートなどを担当し、2016年よりフリーライターに。経営者向けウェブメディア等で、経営者インタビュー、組織改革、DXなどについて取材・執筆。